ふとしたときに「髪の毛の抜ける量が多いな」と感じたことはあるでしょうか。寝起き、シャワー、ドライヤー時、髪の毛が抜けるシーンは様々です。
髪の毛は毛周期サイクルによって成長し、抜け、そしてまた新しい髪が生え変わります。
今回の記事で解説するのは、患者が多い9つの脱毛症の種類と症状、原因そして治療法についてです。最近抜け毛が多いと感じる方や脱毛症の疑いがある方、または自覚のある方は本記事を参考にしてください。
各脱毛症の症状が当てはまるのかチェックしていただき、当てはまる場合は医師へのご相談をおすすめします。
AGA(男性型脱毛症)
症状
AGA(男性型脱毛症)とは「Androgenetic Alopecia」の略称です。比較的聞いたこと、見たことのあるキーワードではないでしょうか。
AGAは男性のみに発症し、徐々に髪の毛が抜けていく症状、特徴があげられ、以下のパターンが挙げられます。
- 頭頂部から薄くなる「O字型」
- 髪の生え際(おでこの両端)から薄くなる「M字型」
- 前頭部(おでこ)から薄くなる「U字型」
原因
AGAは「テストステロン」と呼ばれる男性ホルモンが「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素に結びつくこと原因で発症します。
テストステロンと5αリダクターゼが結合すると、「DHT(ジヒドロテストロン)」に変換。DHTは髪の毛を作り出す「毛包」に悪影響を与え、髪の毛の成長サイクルに異常をきたします。
その結果、髪の毛の成長サイクルが乱れ、髪の毛が抜けていくのです。
治療
AGAの代表的な治療法は「ミノキシジル」「フィナステリド」といった薬剤の服薬治療です。
FAGA/FPHL (女性における男性型脱毛症)
FAGAとFPHLは両者とも女性における脱毛症を指します。
FAGAの症状
FAGAとは「Female Androgenetic Alopecia」の略称。「女性における男性型脱毛症」という意味です。
FAGAの症状は、髪の毛の分け目が徐々に広がり、抜け毛が増えるといった初期症状があり、最終的に頭部全体が薄くなります。このように、広範囲にわたって進む脱毛症をびまん性脱毛症と言ったりします。
主に40〜50代の壮年期に発症するケースが多いものの、まれに20代でも発症することがあるため注意しましょう。
FAGAの原因
女性は少なからず男性ホルモン(テストステロン)を保持しますが、女性ホルモン(エストロゲン)が髪の成長を促し、薄毛を防ぎます。
しかし、ストレスや加齢などの原因で女性ホルモンが減ると男性ホルモンの割合が増え、結果FAGAが発症するのです。
FPHLの症状
FPHLとは「Female Pattern Hair Loss」の略称。「女性型脱毛症」という意味です。
FPLHはFAGAとは違い、男性ホルモンの割合が多くなることだけが原因で脱毛症が発症するわけではありません。
つまり、1つの要因ではなく、さまざま要因によって、髪全体、または一部分が脱毛するといった症状が見られます。
FPHLの原因
FAGA同様、ストレスや加齢による女性ホルモンの減少により、男性ホルモンの割合が増えることが原因として挙げられます。
その他には暴飲暴食や睡眠不足による髪の毛の成長サイクルの乱れも原因の1つです。
治療(FAGAとFPHL)
最後にFAGAとFPHLの治療法についてですが、「ミノキシジル」「スピロノラクトン」といった薬剤の服薬治療が代表的な治療法です。
円形脱毛症
症状
円形脱毛症は、円形や楕円形のような部分的に髪の毛が抜ける症状が特徴的です。わかりやすく言うと「10円ハゲ」という言葉が有名ではないでしょうか。
また、円形脱毛症は1ヶ所だけでなく、複数ヶ所に発症するケースもあります。
原因
自己免疫疾患
外部からウイルスや細菌などが侵入した場合、免疫機能が働き外部からの侵入、攻撃を防いでくれます。
しかし、免疫機能に異常が発生すると、髪の毛をウイルスや細菌だと認識してしまい、誤って攻撃を開始。
その結果、脱毛症が発生します。
ストレス
脱毛症の原因はストレスだとされていました。
しかし近年ではストレスは脱毛症の直接的な原因ではなく、脱毛症を引き起こすきっかけの1つとされています。
強いストレスを受け続けてしまうと、交感神経が活発な状態となり、血管の縮小や血圧の上昇などが引き起こされます。
その結果、ストレスを引き金にさまざまな原因が重なり合うことで、脱毛症を引き起こします。
アトピー素因
円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持つと呼ばれています。
アトピー素因とは「気管支ぜんそく」「アレルギー性鼻炎」「結膜炎」「アトピー性皮膚炎」の1つまたは複数の症状を自身や家族が持つことです。
脱毛症患者の多くがアトピー素因を持つことから、脱毛症と関連があるとされています。
治療
「セファランチン」「グリチルリチン」「メチオニン」といった薬剤の服用、「ステロイド」の注射などが代表的な治療法です。
脂漏(しろう)性脱毛症
症状
皮脂の分泌が過剰になることで起こる脱毛症です。
頭皮に赤みや痒み、ニキビ、ベタつきなどの症状が挙げられ、加えて抜け毛が多いと感じる方は脂漏性脱毛症の可能性があります。
原因
食生活の乱れや睡眠不足、ストレスなどが挙げられ、その他にも「マラセチア」という真菌が脱毛症を引き起こすケースもあります。
マラセチアは皮脂を栄養分とし、増殖すると炎症を引き起こしてしまい、結果、脱毛症につながるのです。
皮脂の過剰分泌を抑えるためにも、日頃から暴飲暴食を避け、充分な睡眠をとることでストレスを軽減するようにしてください。また、適切な洗髪も対策につながります。
治療
代表的な治療法はストロイドの内服薬、外服薬。そして抗真菌薬の内服などです。
ひこう性脱毛症
症状
頭皮全体にフケが発生し、毛穴がふさがれてしまうことで発生する脱毛症です。
大量のフケにより毛穴がふさがれ、細菌が繁殖することで頭皮に炎症を引き起こします。
炎症が起こると髪の毛の成長サイクルに悪影響を与え、抜け毛につながるのです。
また、頭皮にフケが付着するだけでなく、かゆみや赤みといった症状が見られます。
「頭がかゆいから」といって頭をかいてしまうと、頭皮に刺激を与え炎症を悪化させるため、頭をかかないように注意しましょう。
原因
フケの起こる原因は、洗浄力の強いシャンプーの利用や高頻度のパーマによる頭皮の乾燥。さらに運動不足や睡眠不足、ストレスによるホルモンバランスの乱れが挙げられます。
脂漏性脱毛症でも解説しましたが、日頃からの生活習慣が起因となるため、心当たりのある方は生活習慣の見直しから取りかかりましょう。
治療
ひこう性脱毛症の代表的な治療法は、ストロイドを使用した外用薬の治療です。
牽引(けんいん)性脱毛症
症状
文字通り、髪の毛を引っ張ることで発症する脱毛症です。
三つ編みやポニーテールなどをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
早ければ10代でも発症する可能性もある牽引性脱毛症。
頭皮に強い刺激を与える髪型をする機会のある方は注意が必要です。
原因
日頃から髪の毛を引っ張るようなセットが多い場合、頭皮の一部を圧迫。そして血行不良になることが原因として挙げられます。
血行不良になると髪の毛に栄養が届かなくなり、髪の毛の成長サイクルに悪影響を与えるのです。
治療
牽引性脱毛症の治療法はHARG治療やメソセラピー、または植毛が挙げられます。
または、治療法とは言い難いですが、頭皮に刺激を与えない髪型にすることも念頭においてください。
産後脱毛(分娩後脱毛症)
症状
分泌後脱毛症とは、出産後に発症する脱毛症のことです。別名「産後脱毛」とも言います。
産後およそ3ヶ月前後で現れる脱毛症で、その後半年から1年ほどで症状が解消されるのが特徴です。
原因
女性ホルモンの分泌量が産後に急激に変化することが挙げられます。
女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類が存在します。そのうちのプロゲステロンは髪の毛の成長を保持する役割を担います。
妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンが多く分泌され、髪の毛が保持された状態が続きます。
しかし、産後はエストロゲンやプロゲステロンが急激に減少してしまい、結果抜け毛が多くなるのです。
治療
先述したとおり、分泌後脱毛症は発症後、半年から1年ほどを目安に解消されますが、気になる方は医師への相談をおすすめします。
休止期脱毛症
症状
休止期脱毛症とは、毛周期(ヘアサイクル)の中でも、成長期にある毛が休止期になることにより、抜け毛が多くなる脱毛症です。
休止期脱毛症には、急性休止期脱毛症、慢性びまん性休止期脱毛症、慢性休止期脱毛症があり、それぞれ特徴があります。
原因
休止期脱毛症の原因は様々ですが、主に生活習慣の乱れなどによって起こります。
それ以外には、薬の作用で休止期脱毛症を発症することがあり、抗がん剤などはこれの一例です。
また、甲状腺の疾患や亜鉛欠乏症を始めとする病気が原因のときもあるため、こういった病気のサインかも知れません。まずは医師に相談しましょう。
治療
休止期脱毛症の治療法としてメジャーなのが、ミノキシジルやパントガールと呼ばれる薬を飲む投薬治療です。
それ以外にも、費用は高くなりがちではありますが、HARG治療やメソセラピーも有効とされています。
トリコチロマニア(抜毛症)
症状
トリコチロマニアとはこれまでご紹介した脱毛症とは異なり、自身で髪の毛を抜く行為、癖のことです。
症状としては髪を抜いた箇所が薄毛、または毛根がなくるといったことが挙げられます。
原因
欲求不満、精神的なストレスが原因で髪の毛を抜く行為に走ると言われ、多くは幼稚園児から小学生などの小児に現れるとされています。
ただし、大人にも発症する可能性も少なくありません。
髪の毛を抜いている本人は自覚してることもあれば、無自覚で抜く行為に走っているケースもあります。
治療
トリコリチロマニアは先述したとおり、精神的ストレスが原因で髪の毛を抜いてしまうため、精神科での治療が最適でしょう。
薄毛治療専門クリニックでの治療となる場合は、植毛治療が挙げられます。
脱毛症は医師に相談しよう
いかがでしたでしょうか。
脱毛症には様々な種類があり、それぞれ特徴があることをお分かりいただけたと思います。もし当てはまる症状があった場合、一人で悩まず近くのクリニックへ相談へ行きましょう。
脱毛に限らず、病気の早期発見が私たちに安心を与えてくれます。